2016年10月10日

日教組の道徳観 集団主義

 第四次長野集会において、はじめて「民主的な人間関係のための特別教育活動・生活指導はどのようにすすめるか」というテーマをかかげる分科会がもたれた。(日本教職員組合『道徳教育シリーズNOー1 総論』44頁)

 この年は所謂教育二法反対闘争に明け暮れた年であり、「長野集会は教育二法施行下初めての教研集会であった」ということだ。そこでの討議のまとめを『総論』は『日本の教育』第4集より引用している。
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 ひとりひとりの子どもが他の子どもを大事にし、大事にされあう人間関係をつくりだすことは、人間を尊重しない力、人間をたんなる道具とみる戦争政策に抵抗し、それを打ち破るしっかりした土台をつくりだすことを意味する。この非人間的な大きな力に苦しむひとりひとりが悩みをもちだし、それを皆の問題として手を結んでたちむかうためには、子どもがしっかりした民主的な人間関係―仲間意識に支えられた集団を形づくっていかなければならないし、また非人間的な力ととり組む過程において、この、ヒューマニズムに基礎をおいた人間関係が形成されてくるのではないか。この集団の中で、集団の力によってこそ、個人的問題も、はじめて正しく理解されるのではないだろうか。(日教組編「日本の教育」第四集、一〇五頁)
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 ここから「仲間づくり」とか「集団」づくりという言葉が日教組組合員の中に広まっていったと、日教組では理解していた。
 「第七次教研がすすめられていた三二年、それは日教組が結成一〇周年を迎えた年であったのだが、他面、この年は道徳の時間特設および勤務評定実施という民主教育に対する最強の攻撃がしかけられた年でもあった。大分別府集会では、特別分科会として「道徳教育」と「教育制度」の二つがもたれたのは、この攻撃をどのようにはねかえすかをじっくりと討議するためであった。」(日本教職員組合『道徳教育シリーズNOー1 総論』48頁)
 教研集会では「道徳教育」の特別分科会を設けてたたかいをすすめようとしたのである。おや、道徳が教科化されるこの期に及んで日教組教研はどういうとりくみをするのだろうか。少なくとも福教組にはなにかしてもらいたい。
posted by 新谷恭明 at 23:30| Comment(0) | 研究ノート | 更新情報をチェックする

日教組の道徳観  旭丘中学綱領

旭丘中学綱領(昭和28年)
 誰もかれもが力いっぱいのびのびと生きていける社会、自分を大切にすることになる社会、誰もかれもが「生きていてよかった」と思えるような社会、そういう社会をつくるしごとが私たちの行手に待っている。
 その大きなしごとをするために私たちは毎日勉強している。
 私たちはつぎのことがらをいつも忘れず、大きい希望と自信とをもち、みんな力をあわせてがんばっていこう。
一、祖国を愛しよう
 私たちみんなが幸福になるために、古いしきたりを打ち破り、美しい自然と平和な国土をきずき上げよう。
二、民族を愛しよう
 かくれたかがやかしい民族の歴史を学び、人間の強さと尊さを知り、自由で平和な社会をつくる人になろう。
三、労働を愛しよう
 責任を重んじ、みんなのためにはたらくことの尊さを知り、いいことを進んで実行しよう。
四、科学を愛しよう
 人間の幸福のための学問を尊敬し、なんでも、なぜ?と考える人になろう。
五、公共物を愛しよう
 私たちの生活を豊かにするみんなの物を美しく大切に使い、平和な国、美しい町、明るい学校を育てよう。
六、「仕方がない」をやめよう
 自分や友だちを見すててしまわず、いつでももっといい方法はないかと考え、みんなの力で一つ一つ解決して行こう。
七、しりごみをやめよう
 いじけたりかくれたりしないで不生を見のがさず、正しいことをどしどし実行する勇気をもとう。
八、いばるのをやめよう
 生徒も先生も、女子も男子も、いばったりおどかしたりこわがったりしないで、親切にあたたかくたすけあっていこう。
九、ひやかしやかげぐちをやめよう
 おたがいに親切に忠告しあい、よろこんで忠告をきくようにして、かげでこそこそするのをやめよう。
十、ムダをやめよう
 時間や資源をムダにすることをやめ、みんなの幸福のため、役立てよう。

※いろんな意味で有名な旭丘中学事件の舞台となった旭丘中学の道徳規範である。日本共産党の指導が入っている感触があるが、今の時代の人々はどう読むだろうか。ウヨク系の方々はどう思うだろうか。
 しばしばウヨク系の方々は「科学」はマルクス・レーニン主義だと言う。例えばYahoo知恵袋なるサイトで「どうして日教組は道徳教育に反対するのですか?」という質問に対して選ばれたベストアンサーは
  道徳とは、資本主義のものと日教組は考えている。
  社会主義革命には、資本主義の道徳は邪魔になるから。
  日教組は、社会主義革命を目指すための政治組織だから。
  証拠は『教師の倫理綱領』。
 と回答し、「日教組の本質は昭和27年の『教師の倫理綱領』に現れています。綱領には、教師は科学的真理に立って行動する、とあります。科学的真理とはとりも直さす、マルクス・レーニン主義のことです」 というおそらく杉原誠四郎氏の文章を引用して説明している。この説明はたぶん正しい。
 日本共産党は社会主義の理論を「科学的」と表現してきたことは事実である。しかし、マルクス・レーニンの著作を読んだことのある組合員が皆無に近い現在の日教組にそのような高尚な知見を求めても無理というものである。そこは素直にわれわれが使っている科学、殊に社会科学の意味だと考えていいと思う。「教師の倫理綱領」が作成された頃マルクス・レーニン主義は「科学的真理」だとマル経の学者たちとその影響下の活動家たちには信じられていた。そして現在、マルクス・レーニン主義を科学的真理だと思っている研究者はそう多くはいないだろうと思うからである。むしろ、現在の社会科学の成果はそのようなイデオロギーの信奉に批判的だからだ。
 そのような時代錯誤の文言を日教組批判に持ち出してきたこの回答者には時代の流れについてきていない「時代遅れの男(女かもしれないが)」という称号を与えたい。
posted by 新谷恭明 at 23:04| Comment(0) | 研究ノート | 更新情報をチェックする

2016年10月08日

小学校の勅語紛失ー選挙の争ひから校長を陥れんと  奉安室から盗み出して隠す



広島県安佐郡狩小川尋常小学校に奉置せる勅語紛失事件此程に至り発覚現校長谷口叙氏の責任問題を惹起し同県教育会の大問題となり居れり事の起りは昨年十月三十日勅語発布記念日同校にては全児童を集めて谷口校長勅語を捧読せんと奉安室を開扉せしに始めて勅語の紛失せることを発見し校長以下職員は色を失ひ八方捜査せるも判明せず事件は其儘秘密に附せされ居たるを此程に至り嘉部警察署にて認知し捜査の結果右勅語は同郡役所内の某所に隠しあるを発見し校長は譴責処分に附せられたり事件の発端は先頃同村にて郡会議員選挙の際候補者六宗輝夫、白川軍助両氏が猛烈なる競争をなし其際校長が白川派に応按せるより六宗派は激昂し同校長を陥れんが為右勅語を取り出し前期の始末に及びたるものなるが如し(広島電話)

「福岡日日新聞」大正十年三月六日
posted by 新谷恭明 at 19:25| Comment(0) | 研究ノート | 更新情報をチェックする

2016年08月08日

アクティブラーニング?

明治以来、教育といえば何でも大学本意にやつて来た「伝統」が、思いきや小学校の教室までを、大学式にしてしまつたのである。ノートをもつて、教室へ入るとやがて教授が現れる。立板に水の講義がはじまる。ノートにかゞみこんだ学生が一心にペンを走らせる。やがてこの学生のうちの幾人かが、高等師範や師範学校の教師になる。ひとつ覚えの講義、法廷に立つた検事か弁護士風の講義がはじまる。ノートをとる生徒がこれのバトンをうけついで、やがて小学校の教壇に立つ。大学の方式は、かくて小学校の方式へと直通しまつている。先生が、独り舞台の活躍をするというのも、遠い源があるわけだ。


宮本敏行『新しい教え方・学び方』若狭書房
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2016年05月23日

こういう問題は現在ならまずいだろうな

明治39年施行福岡県小学校教員試験検定問題に次のようなのがあった。科目は算術科。
(筆算)男女合せて三十人の月給総額拾六円にして其日給は男は六拾銭女は四拾銭なりと云ふ。今男の日給を五銭増し女の日給を五銭減らすときは日給総計何程となるか。
posted by 新谷恭明 at 12:00| Comment(0) | 研究ノート | 更新情報をチェックする

明治39年の採用試験問題。

明治39年施行福岡県小学校教員(本科正教員)試験検定問題

   △修身科
一、恭倹の美徳たる所以を説明せよ
二、家庭的道徳と国家的道徳とを述べよ
三、帝国議会の組織を述べよ
△教育科
(原理)
一、生活上の高尚なる興味を列挙し且教育に於て特に注意すべきものを詳述せよ
二、不良なる衝動及欲望を抑制する方法
三、共同教育の利害
四、左の用語の区別を明かにせよ
イ、論理的概念と心理的概念と
ロ、義務の情と責任の念と
ハ、経験的自我と純粋自我と(女子は第四に答ふるを要せず)
(管理法)
一、教則に基ける教科用図書の採択上の注意を述べよ
二、地理科、歴史科の主なる教具の種類を問ふ
(教育史)
一、古来外国の文物制度が我国の教育に及ぼしたる影響を簡明に記せ
二、スペンサー氏の略伝及其学説を述べよ
△国語科
(釈義)
一、左の文を解釈せよ
イ、こたみは皆世にゆりたるふるき道のものともなり宮内卿はまだしかるべけれど もけしうはあらずと見ゆめればなむかまへてまろがおもておこすせばかりよき歌 つかうまつれとおほせらる(明らかな誤植は新谷が訂正)
ロ、左の歌の意を解け
 雲はみなはらひはてたる秋風を松にのこしてつきを見るかな
二、左の語句を解釈せよ
1.前栽、2.散文、韻文、3.東鑑、4.金覆輪の鞍、5.脚本、6.婆娑、7.三寸不律を提げて風月を盃盤談笑の間に詠ず 
三、平安朝の文学と鎌倉朝の文学との特徴は如何
四、
イ、単文と複文との区別の例をあげて説明せよ
ロ、過しし、過せし、忍耐しし、忍耐せし、
 右文法上何れが正しきか其理由をもあはせて答へよ
(作文)
一、読書の楽
二、学園の設置に付意見を問合はす
(習字)
一、成大功者不謀於衆(楷書)
二、人のふり見て我がふり直せ(行書と平仮名)
三、写字厳正分明作文簡約切実(楷行草三体) 
四、左の字画を問ふ
女、出、糸、鼠、翰
posted by 新谷恭明 at 11:55| Comment(1) | 研究ノート | 更新情報をチェックする