2017年07月20日

佐々木盛雄『天皇制打倒論と闘ふ』第二章②

 で、其の二は「天皇制は悪用されるとの論」をあげている。これは「天皇制は、過去において軍閥、官僚に悪用されて来たし、将来も亦この制度が残つてゐる以上は、悪用される危険性があるから廃止せよと云ふ」論のことだ。佐々木は悪用の事実については同意する。
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・・・なるほど天皇制は財閥、管理用、軍閥によつて完全に悪用された。軍閥は天皇の名において、皇軍を私兵と化し、あくなき侵略と暴虐の具に供し、官僚、財閥また軍閥と結托し、天皇の名を悪用して人権の自由と平等を完膚なきまでに蹂躙し、その結果われわれは封建的な臣民としてのみ天皇に愛撫され、天皇に服従し、天皇に帰一することのみを至上の幸福とする思想に強制せられ、また議会もも天皇の名を悪用する政府や軍閥官僚によつて蹂躙されたことは、正に万人の認めるところである。
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 だから天皇制を廃止せよというのが打倒論者の主張であるが、佐々木は「斯くの如き牽強附会の論には絶対に同意しない」と言う。「何故ならば、凡そ如何なる存在でも善用されたり、悪用されたりするのは世の常であり、従つて悪用される危険性があるなれば、その危険性だけを除去すればよいのであつて、何も天皇制そのものを廃止するには及ばぬからである」と至極当然の論理で返すのである。
 そして、次のように結論づける。
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・・・・天皇大権の極度の縮減が予想される現在、かかる天皇制を維持したとしても、それは決して反動勢力の温床とはならないであらう。否、それよりも天皇制の存続によつて、国民感情の分裂を避けると共に、分派的闘争的関係にある諸政党の上に立つ、何物にも偏せざる安定勢力を持つことは、大統領制や、ソビエツト式議長制にも劣らぬ有数なる日本の民主々義的政治組織であると確信するものである。
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 佐々木にとって骨抜きになった天皇制は民主主義なのであった。
posted by 新谷恭明 at 19:41| Comment(0) | 研究ノート | 更新情報をチェックする
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