2016年04月16日

熊本の地震

 昔、明治期の師範学校に於ける修学旅行についてという文章を書いたことがある。それは橋本元吉という教師が書いた日誌を紹介したものである。この日誌は三潴町の鶴久次郎氏(故人)が収蔵していた史料で、橋本元吉氏が師範学校の生徒だったときの修学旅行の日誌や、教員になってからあちこちに視察旅行に行ったときの日誌(万年小学校にも行ってる)などを綴じたものだった。
 橋本元吉は久留米出身で福岡師範学校第五回卒業生である。そして明治22年の7月24日から8月15日の間、福岡師範学校は熊本への修学旅行をおこなっており、そのときの日誌だ。橋本は第五回卒業生だが、同期生はほとんど登場せず、第四期生が多く名前を出している。第四期生には野口援太郎がいるが、日誌中には香月援太郎という名が出てくる。これが同一人物かどうかはわからない。
 修学旅行は当初7月21日に出発の予定だったが、大雨が続いたため順延となり、24日になって天候の如何にかかわらず決行することとなった。7月24日は4時起床、5時20分に出発した。まだ雨は激しかったが、10時過ぎに武蔵湯町(二日市温泉)に投宿したところから旅は始まった。ちなみにこの大雨も記録的なもので、「湛水の箇所は村数232、戸数33,372、被害建物全流亡1,346、半流亡895、毀損8,779、死者69人、負傷75人」とある。
 そして、7月28日は三池泊となった。夜は仲間5人で「リキュー」を飲み、8時半の人員検査後すぐに寝入った。そして11時半頃のことだった。
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〔七月二十七日〕
・・・十一時三十分大地震アリ。睡眠中ノコトヽテ初メハ大風ニテ家屋動揺シ、傾斜スルモノカト思ヒ、身ヲ起シテ座セシカ、初メテソノ風ニアラサルコトニ気付キ地震ナリト言フ者モアリテ其ノ然ルベキニ心付キタリ。其ノ時ハ既ニ止ム頃ナリシモ人ト共ニ争ヒテ階段ヲ下リテ戸前ニ出テタリ。止ミテ後モ再ヒ震ヒシカ共ニ石松豊作氏ト起キ上リタルモ出テサリキ。二時二十五分ニ又大ニ震フヘシトノ電報アリタリナト云フ者アリ遂ニ起キ出テヽ表床上ニ再ヒ出テ来リ。此ニ寝ネテ其ノ時ヲ待チタリ。中村文太郎氏ハ先発ニテ出テタリシカ。三時三十分頃小震アリ。夫ヨリ直チニ出発用意ヲ報セラレタリ為ニ睡ルコト甚タ少ナカリキ。宿ハ小松屋トイヘリ。此ノ時ハ家屋ノ堅牢ナルヘキヲ痛感セリ。
(11時30分頃に大地震があった。睡眠中だったのではじめは強風で家屋が揺れ、傾いたかと思って起き上がって座った。そしたらどうも風ではない事に気づき、「地震だ」という者がいて、そうなんだと納得した。その時は地震も収まりかけた時ではあったが、我先にと階段を降りて外に出た。その後も余震があったが石松豊作くんと起きはしたものの外へは出なかった。2時25分に再び大きな地震が来るという電報があったと言う奴もいて、外に出てそこで寝て待機することにした。中村文太郎くんが先発で出かけた。3時30分頃にまた余震があった。そこで「出発用意」の達しがあり、結局ちゃんと寝られなかった。宿は小松屋という。建物が堅牢でよかったと思った次第だ。)
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posted by 新谷恭明 at 17:56| Comment(0) | 研究ノート | 更新情報をチェックする

2016年04月01日

嗚呼、過労死か。今も昔も働き過ぎはいかんね。

会員武藤タマノ訓導を追悼して
            宗像郡上西郷尋常高等小学校
大正八年九月十七日午前一時会員武藤タマノ訓導病没せられ早一星霜転た追悼の情禁じ得ない
顧れば明治三十六年以来本県教育界に入り大正二年十一月本校に赴任し校内外に尽瘁する処多く殊に旌旗会県調査会其他研究会頻々煩雑を極むる折柄身は偶々女子の任務たるべき妊娠中日夜業務に服し一度尿毒症発するに及び身体の疲労日一日と加はり遂に徒跣出勤の止むなきに至る僅か五六町の距離さへ辛じて其の日課を終るなど其の熱烈なる精神実に範たるべき愈病革つて病床に臥されては全身の衰弱と四肢の浮腫も当られず其の自由を失せる苦痛苦悶の状看護に堪え難たからしめ而も此の苦悶中分娩したる愛児も打忘れ枕頭の同僚職員に訴うるに唯々事務分掌上責任を絶叫して止まなかつた可憐なる三才一才の二愛嬢を残し遂に不帰の客となつた此の悲惨なる最期迄其の事に当るに熱誠なる誰か同情の涙に咽ばざる茲に一週年祭に際し聊か一文を草して追悼の意を表するのである
                               (『福岡県教育』281 大正9年8月)

まあ、妊娠中も無理して働いたせいで尿毒症を併発して、亡くなったのだそうな。
posted by 新谷恭明 at 00:35| Comment(0) | 研究ノート | 更新情報をチェックする