2014年02月25日

堺利彦『家庭の新風味』明治34年(第一刷第四章 家族論)

 家族については民法に色々の規定があるけれども、民法は、我国旧来の家族制度の皮をかぶつてゐるので、到底今後の家族を説明するには足らぬ。今後の社会は家族を単位とせずして個人を単位とする。家といふものが代々伝はつてゆく訳ではなく、一人の男子と一人の女子とが結婚して、そこで新に家を作つてゆくのである。
 家の中心は夫婦にある。家は夫婦によつて成立つ。夫婦即ち家と云つても善い。夫婦が家を作つて、夫が家長になつて、妻が主婦になつて、其周囲に家族をおいて、そして家政を行ふのである。
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2014年02月21日

いしかわじゅん 「漫画に描かれた家族と「お膳」」

 今の朝日新聞の四コマ漫画は、いしいひさいちの「ののちゃん」。その前は「となりの山田君」。どちらも家族ものですが、そこにはすでに一家団欒やちゃぶ台を囲んでご飯を食べて、といったシーンはありません。その差が昭和二〇年代から四〇年代と現代との、漫画に現れる「家族」の差なのです。

 昭和五〇年代に入ると、もはや家族は完全に崩壊してしまい、どこにもありません。田舎にはまだ残っていたと思いますが、漫画の世界は町の生活を描くことが多いので、都会では少なくとも家族というものが成立しなくなって、家族漫画もなくなっていきました。
 代わりに登場したのが同棲とは異なる疑似家族を描いた漫画です。……漫画は、奇想天外なお話を描くか、現実を描くかしかありません。昔は現実を描こうとすれば家族漫画があったけれども、この時代になると現実を描こうとすると、家族漫画はもはや成り立たず、疑似家族を描かざるをえなかったのです。

小泉和子編『ちゃぶ台の昭和』河出書房新社2002

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チャブ台のイデオロギー

 家具を頂点とする「家の制度」を反映するかのように、長幼、男女の別の原理をもつ座順にしたがって、ならべられた銘々膳での食事は、参加する者同士が和気あいあいと食べることを楽しむ性格はすくなく、食事のさいにも緊張関係が存在するものであった。のちに述べるように、現実にはチャブ台での食事においても、銘々膳の食事のさいの雰囲気が多分に残っていたものと考えられる。しかし、このあたらしい食卓にイデオロギーを託そうとする論者たちによって、「だんらん」の思想が主張された。
 このことを、はやくから主張したのは社会主義者の堺利彦である。かれは1903(明治36)年刊の『家庭の新風味』で次のように述べている。

              石下直道「食卓文化論」(『国立民族学博物館研究報告別冊』16号 1991)
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