2013年11月08日

山本鼎『油画のスケッチ』第一章油画スケッチに就ての心得その2

 即ち魅惑されると共に愛して居るのであつて、愛こそ表現の酵母であります。
 而して次に来たるものは、表現の欲望です。
 其欲望は、諸君に必然、形と彩(いろ)と調子(トオン)を観察せしめ、同時に何等かの『趣味』を感受せしむるでありませう。
『趣味』とはむしろ教養の産物で、原始人よりは文明人、児童よりは大人がこれを複雑に有つて居り、多く或る境環の情趣にそれが認識せらるゝのであります。
〈略〉
 さて、諸君は愛と趣味とを以て表現の技巧的追求に移らるるのでありますが、まづ眼を『形態』の観察におつけなさい。
 円体である顔の反面は広く蔭になり、鼻は鼻でやはり半分を蔭にされて居るでせう。
 すべいそれは、『面』が作つて居る立体的な『調子(トオン)』なのです。
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2013年11月06日

山本鼎『油画のスケッチ』第一章油画スケッチに就ての心得その1

〈略〉
 まづ『表現』とは画(え)にあつては、描き現されたものゝ謂で、諸君は常に第一に『表現の純』を失はぬやうに心掛けねばなりません。
〈略〉
『表現の純』とは、眼から心に感銘された真実が率直に描き示された事であつて諸君が自身の印象、感覚、認識等を最も重んじ、それ等の実感から一切の技工を指名され鍛錬される事によつて不断の純に到達する事が出来るのであります。
〈略〉
……美に対する深い感覚が其処に潜むで居るのです。
 而して、美術の動機はまさに其処にある筈です。ルノワールといふ仏蘭西の有名な画家は、歴史上に類のない、深い肉体の感じを表現しましたが、其人は、曾てこんな事を云ひました。
 「もし乳とお尻とがなかつたら私は女を描かなかつたらう」
 と、……
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山本鼎『油画のスケッチ』緒言(抄)その2

 教育家諸君―
〈略〉
 普通学に併行すべき美術教育は、手芸的であるよりは、知識的精神的なるを要します。

〈略〉
『美術の知識に富むだ者が必しも美術教育の適任者では、美術教育家としての主要なる点は深く生徒等の創造を愛すことである』
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